わんちゃんの咳を聞いたことがありますか?

頻度が少ないと聞き逃されていたり、咳とは思われていなかったりすることもあるようです。犬の咳はいわゆる「コンコン」だけではなく、「ゼーゼー」や「ゲッ、ゲッ、ゲェッ!」と吐き気があるかのように聞こえることもあります。

人間が咳をするとまず風邪を疑うところですが、犬、特に中高齢の犬の咳の場合は、心臓病を考えに入れます。もちろん心臓病を患っている場合に必ず咳がでるわけではありませんし、咳をしたからといってすべて心臓病であるというわけでもありません。
呼吸器病やフィラリア症などのほかの疾患も疑って検査を進めていくことになります。

ここでは高齢の犬に多い、僧帽弁閉鎖不全症という病気についてお話ししたいと思います。
この病気は、心臓の中で左心房と左心室を隔てている僧房弁という薄い膜の弁が、きちんと閉まらなくなる状態です。この弁の閉鎖不全によって、血液の逆流が起こり、心不全症状を起こします。軽症のうちはほとんど無症状ですが、進行すると咳や疲れやすさなどの症状が出るようになります。この咳は明け方や興奮した時、水やフードを食べたときなどに出ることが多いようです。
重症になると肺水腫(肺の中に水分が漏れ出ること)やチアノーゼ(舌などの色が青くなる)、高血圧などによる症状が現れ、呼吸不全や不整脈により突然死することもあります。

このような後天性の心臓病では、心臓そのものの異常は取り除けないことがほとんどです。
高血圧や咳などの症状を、飲み薬や運動制限、食事療法などでコントロールすることを目指していきます。また、このようなケアは、犬の生涯を通して必要になります。

寒さの厳しい冬は、他の疾患と同様に心臓病も悪化しやすい季節です。最近、咳がよく出るようになった、散歩を嫌がるようになった、などの症状がありましたら、一度ご相談ください。