もうすぐ、当病院では秋の健康診断が始まります。このキャンペーンでは通常の血液検査(内臓のスクリーニング検査や血液成分の検査)だけでなく、ホルモン検査も追加して行うことができます。

ホルモン検査の場合は獣医師がこの機会にと勧めることがあるかと思います。ホルモン検査を勧められた時、いったいどのような病気が疑われているのかということを知っておくことは大切です。

ここでは、秋の健康診断検査でわかるホルモンの病気についてお話します。

甲状腺の病気
甲状腺は頚部にある腺組織です。甲状腺からは2種類の甲状腺ホルモン(T3とT4)が分泌されていますが、検査ではそのうちのT4というホルモン濃度を測定します。甲状腺ホルモンは細胞の代謝を調節しており、甲状腺ホルモンが多いと代謝が活発になりすぎ、少ないと代謝が悪くなってしまいます。
猫、特に中~高齢の猫の場合は、甲状腺機能亢進症という病気が多くみられます。これは甲状腺腫瘍によるものが多く、過剰なホルモン分泌により、代謝が活発になりすぎてしまいます。がつがつ食べるのに体重は減る、水を飲む量が増えたりおしっこの量が増える、過剰に興奮する、下痢等の症状が出てくることがあります。また、心拍数が上がり呼吸が浅く速くなることもあります。
犬では逆に、甲状腺機能低下症という病気が多く、ホルモン分泌の低下により代謝が著しく悪くなります。この病気は4~10歳の中型~大型犬に多いと言われています。運動を嫌がる、食欲は変わらないが体重が増える、フケや脱毛などの皮膚病が見られるなどの症状が見られるようになったら注意してください。

副腎の病気
犬では甲状腺ホルモンの他に、コルチゾール(グルココルチコイド)という副腎皮質から分泌されるホルモン濃度を測定することができます。副腎は腎臓の前にある小さな臓器で、その外側の副腎皮質という場所で2つのステロイドホルモン(ミネラルコルチコイドとグルココルチコイド)を産生しています。グルココルチコイドは栄養の代謝や炎症反応の抑制に働くホルモンです。
副腎皮質機能亢進症(クッシング病)は中~高齢犬で発生しやすく、慢性的なコルチゾールの過剰からさまざまな症状が引き起こされます。よく見られる症状には多飲多尿(尿量・飲水量の増加)、食欲増加、肥満、腹囲膨満(お腹がぽっこり出てくる)、脱毛・皮膚感染症などの皮膚症状、運動不耐性(運動を嫌がる)などです。このような症状に加え、血液検査、ホルモン濃度、エコー検査、などから総合的に判断していきます。

今回挙げた病気は、ホルモン疾患の中でも一般的にみられ、確定診断がつきやすいものです。また、これらの病気は薬でのコントロールがしっかりできれば上手につきあっていける病気でもあります。この機会を利用して、是非早期発見、早期治療につなげていきましょう。